JAXA法改定の焦点

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現行法

改定案(2012年2月14日に国会に提出された)

JAXAによる宇宙の開発・利用は非軍事目的

(機構の目的)
第四条 独立行政法人宇宙研究開発機構(以下、「機構」という)は、大学との共同等による宇宙科学に関する学術研究、宇宙科学技術 (宇宙に関する科学技術をいう。以下同じ)に関する基礎研究及び宇宙に関する基盤的研究開発並びに人工衛星等の開発、打上げ、追跡 及び運用並びにこれらに関する業務を、平和の目的に限り、総合的かつ計画的に行うとともに、航空科学技術に関する基礎研究及び航空に 関する基盤的研究開発並びにこれらに関連する業務を総合的に行うことにより、大学等における学術研究の発展、宇宙科学技術及び 航空科学技術の水準の向上並びに宇宙の開発及び利用の促進を図ることを目的とする。
JAXAによる宇宙の軍事的開発・利用を容認

(機構の目的)
第四条 独立行政法人宇宙研究開発機構(以下、「機構」という)は、大学との共同等による宇宙科学に関する学術研究、宇宙科学技術 (宇宙に関する科学技術をいう。以下同じ)に関する基礎研究及び宇宙に関する基盤的研究開発並びに人工衛星等の開発、打上げ、追跡 及び運用並びにこれらに関する業務を、宇宙基本法(平成二十年法律第四十三号)第二条の宇宙の平和的利用に関する基本理念にのっとり、総合的かつ計画的に行うとともに、航空科学技術に関する基礎研究及び航空に 関する基盤的研究開発並びにこれらに関連する業務を総合的に行うことにより、大学等における学術研究の発展、宇宙科学技術及び 航空科学技術の水準の向上並びに宇宙の開発及び利用の促進を図ることを目的とする。


改定案の「宇宙基本法第二条の宇宙の平和的利用に関する基本理念」とは何を指すでしょうか?
宇宙基本法第二条は、「宇宙開発利用は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約等の宇宙開発利用に関する条約その他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとする。」

と謳っています。宇宙開発利用が「日本国憲法の平和主義の理念にのっと」って行われるならば、宇宙の軍事利用は禁止されるのではないか?と思われるかもしれませんが、 そうではありません。宇宙基本法第14条では、安全保障目的=軍事目的の宇宙の開発と利用を容認しています。

宇宙基本法第十四条 「国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。」

現在、軍事偵察衛星である「情報収集衛星」(内閣官房が主管)や、ミサイル防衛(防衛省が主管)のための研究開発が「日本国憲法の平和主義の理念にのっと」って行われています。これは、宇宙基本法第14条の「国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を促進するため、必要な施策 を講ずるものとする」に合致しています。

宇宙基本法が成立する以前は、宇宙開発事業団発足に伴い行われた決議である「我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議(1969年5月9日衆議院本会議)」が日本の宇宙政策の根幹をなしていました。「平和の目的に限り」は「非軍事」であるという解釈が国会の審議・答弁で定着しました。この解釈を変更し、「専守防衛の範囲内で 防衛目的の利用は可能になる」としたのが宇宙基本法です。

政府は「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話を2011年12月27日に発表し、武器輸出三原則について、防衛装備品等の国際共同開発・生産に関しては「包括的に例外化措置を講じること」としました。すでに2004年12月10日の内閣官房長官談話において、弾道ミサイル防衛システムについては武器輸出三原則の例外とされています。

ミサイル防衛は、仮想敵国が打ち上げた弾道ミサイルを迎撃するシステムとされていますが、その推進は、日本独自の技術により日本を守るというよりも、日米の軍事的一体化・日米の軍事産業の補完的一体化によって米国の先制攻撃のための宇宙・地球規模の兵器システムを防衛することが目的という色合いが濃いと考えます。

現行JAXA法から「平和目的」規定を削除しようとする改定案の本質は、JAXAを宇宙の軍事利用の実施機関とするための体制づくりにほかなりません。これでは、宇宙科学の健全は発展は阻害されてしまいます。